良縁祈願祭│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#033

良縁祈願祭

2015-08-20 21:01:00

 このコラムにも登場したことのある仲良しKぴょんとMちゃん(コラム『女子会』参照)と一緒に、川越にある氷川神社に行ってきました。こちらの神社、何でも縁結びで有名らしく、毎月末広がりの8日8時8分から良縁祈願祭を執り行っているとのこと。とにかく結婚したいMちゃんは二度目の参拝。一度目のご利益どこいったんだよと心の中でつっこみながらも、話しを聞いてみると今回の日程は、ますます末広がりな8月8日!年に一度のビッグチャンス到来!これは女子力高めのイベントだ!ということで、私もついて行くことにしました。かもーん、良縁!

 当日は朝6時にKぴょんが車で迎えに来てくれました。その日は燃えるゴミの日だったので、マンション下の集積所にゴミを出してから車に乗り込んだところ、Mちゃんに「繭子って若いと思ってたけど、今ゴミ出ししてる姿見たら、普通におばさんだった」と言われました。ああ、おばさんだよ。甥っ子の友だちに普通に「××くん、このおばさん誰?」って訊かれるんだから。ちなみに、甥っ子は私のことを「まーたんだよ」と友だちに紹介してくれます。車は一路、未来の幸せを掴みに川越へ。車内に流れるスピッツのベスト盤(すげー古いやつ)をほぼ完璧に口ずさむ後部座席のまーたん、「ねえ、間に合う?」と100回ぐらい訊いてる助手席のMちゃん、「大丈夫、大丈夫」と男勝りな運転をするKぴょん。初めて会った時は12歳だった私たちも今では37歳。私たちはもちろんのこと、それぞれの親も歳をとります。Mちゃんは、病気をしているお父さんのためにミキサーを購入して毎日野菜ジュースを作っているそうで、私が「そっかー。お父さん、喜んでるでしょ」と言うと「うん。このミキサー、いくらしたんだ?って言うから、本当は8千円だったんだけど3万円って答えたら3万円くれた」だって。もう、あたし驚愕。思わず「Mちゃん、最低!」と言うと、Mちゃんは「でもちゃんと貯金したもん!」とよくわからない返答。Mちゃんには良縁以前の問題がたくさんある気がする。プチ渋滞の中、口の悪い私が「良縁祈願祭なんて来てるのはブスとデブとババアしかいない」と言うと、Mちゃんが「そういうことを言う人には神様が良縁をもたらせてくれないんだからね」とちくり。「あははー。現に私たちババアだもんねー。若いブスとババアの美人だったら、どっちがいいんだろ?やっぱり若いブスだよね。あははー」とKぴょん。こんな三人が良縁など望めるのだろうか……。

 8時8分からの祈願祭への参加には7時50分までに受付をお済ませくださいとホームページに書いてあったのですが、7時半に到着した私たちは目の前の光景に唖然。そこには良縁を求める女性たちが長蛇の列を作っていました。私は占いやパワースポットにまったく興味がない人間で、ましてやこのような縁結びなるものを心のどこかでバカにしているところがありました。しかし朝早くから夏の太陽の下に並ぶ女性たちを見て、そんな自分が何とも恥ずかしくなりました。女性たちには邪念など一切なくて、ただただ良い人に出逢いたい、幸せになりたいという純粋で真っ直ぐな想いしかないのです。ネタ探しなどと思って足を運んだ私ではありましたが、今日ばかりは素直に良縁を求めてみようとその列に加わりました。結局、もらった整理番号は350番台で8時8分の祈願祭には入れず、しばし待ち時間。その間に『あい鯛みくじ』(写真参照)という恋みくじを釣ったのですが、これによると私の相手は「魚座か蠍座、O型、未年か午年、東か北の人」とのこと。この条件にぴったりの独身男性がいましたら、ご一報下さい。Mちゃんは、おみくじの内容が気に入らなかったようで「もう1個違うのをひく」と言ってもう一つ。するとそのおみくじには『結婚は33歳までが望ましい』と書いてあり、さらに撃沈。そもそもおみくじって何度もひくものじゃないから!あーでもないこーでもないとおしゃべりしていると、私たちの整理番号が呼ばれ、いざ社殿の中へ。足を踏み入れた社殿はひんやりと涼しく、Mちゃんが「神様の気が流れてるから涼しいんだ」と言いました。ぐるりと中を見渡すと格子の下にエアコンが設置してあるのが見えましたが、Mちゃんには黙っていました。若い宮司さんが、社殿につめこまれた迷える大勢の女たちのために、穏やかな笑顔と温かい言葉で良縁を願ってくれたのですが、その宮司さんがありえないぐらい何度も噛んだんですよね。しかも噛んだあとに毎回、苦い顔をするんです。案の定、社殿を出た私たちは「すんげー噛んでたよね」とぽつり。「あんなんで大丈夫かな?」と疑心暗鬼になりながらもいただいた絵馬に願いを書きます。私とKぴょんは、さらりと一言書いたのですが、なかなか書き終わらないMちゃん。ようやく吊るされた絵馬には「きちんと仕事をしていて誠実で真面目な人と出会って、お付き合いして、結婚して穏やかな日々が送れますように」と書いてありました。なげーよ。来年の8月8日の良縁祈願祭に、再び私たちが足を運んでいないことを切に願うばかりです。

image2

最近のコラム

西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

 
西山繭子さんの新刊
【バンクーバーの朝日】
~フジテレビ開局55周年記念映画 公式ノベライズ~
戦前のカナダ・バンクーバーで生き抜く
青年たちの葛藤・奮闘・友情を描いた最高傑作!


バンクーバーの朝日
西山繭子
マガジンハウス文庫
320p 620円(税別)


オフィシャルサイト→FLaMme official website