女子力しゅるぶぷれ│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#007

女子力しゅるぶぷれ

2014-07-28 03:50:00

 ぼんじゅーる、さば?あたくし、ただ今パリにおります。いきなり女子力高めの入りに赤面、ぽっ。ぶらり一人旅ではありますが、父のおつかいで来とります。昨年の夏は松井秀喜さんのお子さんの誕生祝いを持ってNYへ。今年は父の旧友セシルがオーナーを務めるホテルの10周年のお祝いを持ってパリ。あたしは運び屋か。とまあ、何とも豪勢なおつかいなのでありますが、送るプレゼントもデカいの何の。昨年はスーツケースの半分以上をしめるベビーグッズで、今回は直径40cmほどの皿を二枚。ヘビー級に重かった。皿をもらったセシルも「え?これ持ってきたの?」と驚いておりマカロン(パリっぽい)。そんなこんなで早々に任務を終えたので、あとはパリを楽しむべし。ということで、今回はパリのお話。

 今回でパリは七度目。別にパリ好きというわけではないのですが気づけば一番多く来ている街です。初めてのパリは98年フランスW杯。正規販売分の日本戦のチケットが当たっちゃって、こりゃ行かないともったいない思い、初めての一人旅。正直辛かった。ヨーロッパも初めてだったし、フランス語できないし、一人でレストランに入る勇気もなくて、パンばかり齧っていました。すごく惨めだったなあ。リヨンで試合を見てパリに戻り、日本の旅行代理店で予約したホテルに行ってびっくり。辺りの治安は悪い、部屋の鍵を閉まらない、窓は割れている、壁には銃弾の跡、ベッドの上には裸の女、しみだらけの絨毯の上には男の死体。半分嘘だけど、本当にそんな空気だった。それまでの10日間で蓄積していた緊張と疲労が一気に噴き出し、20歳の私は「ああギブアップ」と白旗をあげました。そんな私を助けてくれたのは、出発前に「何かあったら、この人に連絡しなさい」と父に言われていたコーディネーターの女性。飛んできてくれた彼女はホテルを見て「こりゃ酷い」と言い、別のプチホテルを予約してくれました。その晩、彼女が連れて行ってくれたのは日本料理屋。その時に食べたイカ納豆の美味しさは今でも忘れない。あとにも先にも、パリで食べた一番美味しいものはイカ納豆である。

 あの日、助けを求めた20歳の私も、今ではほんのりとほうれい線が浮かびあがり、ぐるぐるぐるぐるグルコサミン。一人でレストランやカフェに入るなど、お茶の子さいさいであります。相変わらずフランス語はわからないから、英語メニューがないとフォアグラしか読めないけど。カフェなどに入ると、たまーにアジア人に対してあからさまな差別を受けることもあります。店奥のトイレ脇の席は全てアジア人で「お客様もそちらにどうぞ」みたいな。そんな店は席を変えてもいたくないから「だっふんだ!」と日本語で文句を言い、さっさと去ります。もちろん腹がたつけど、日本では感じられない差別を、身をもって知るのは大切。まあ、でもそんな店は一握りですよね。私が特にお気に入りのカフェの店員はみんなとっても優しくて、しかもハンサム(ここ重要)。以前、オペラを見た帰り、遅い時間だったので念のために「まだ食べられるものある?」と訊いたところ、彼は自分の顔を指さして「僕」とにっこり。私は「まじ?じゃあ、とりあえず赤ワインと…You」と完全に真顔。あ、このばばあ冗談通じてねえと焦った彼は「うっそでーす」と厨房に消えていきました。ばばあをからかっちゃノンノン。のんのんのんのんグルコサミン。ちなみにオペラは演目が『シンデレラ』だったのですが、王子様役が小太りな上にハゲ散らかしていて、感情移入が非常に難しかったです。オペラですから歌唱力ありきのキャスティングなのでしょうけど、もう少しビジュアルも大切にして欲しかった。

 そしてパリといえば、やはりお買いものでありますね。以前、何かの番組でパリを訪れた紗栄子が物凄い買い物をしていて、女子力の高さを見せつけられましたが、何故かイライラもしました。まあ、人の買い物見たって面白くはないわな。以前もここで書いた(第4回目『女子力は足元から』参照)クリスチャン・ルブタンはいつも覗くのですが買ったことはありません。だって高いもん。エルメスやヴィトンなどは入ったこともありません。だって高いもん。じゃあプチプラでってなると、地元のパリジェンヌがこぞって行くのはZARA、H&M、FOREVER21で日本と変わらないのです。それは情緒がないなってことで、結論から言いますと、あたしゃパリでほとんど買い物しません。一度、パリっぽくと思い高級下着店で赤いレースの下着を購入したのですけど、もうスッケスケのエッロエロで、パンツとしての役割を一つも果たせていないみたいな、おパンツ。こりゃ風邪ひくわってことで一度はいて箪笥のこやしとなりました。そんな女子力低めの私と違って「××のシャツを買ってきてくれ」と言ったのは父。父は身体がかなり大きいので、靴や服は海外でまとめて買うことが多い。父に頼まれたシャツは高級ブランドなどではなく、マレ地区にある小さなお店のもの。よくこんなお店を知ってるなあと、伊集院静の女子力の高さに感服であります。紗栄子か伊集院静か。女子力向上の道は複雑怪奇である。

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website