41歳の初体験│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#128

41歳の初体験

2019-08-12 12:24:00

何十年と「エアコン、苦手なんですぅ」と女子っぽいことを言い続けておりましたが、経年劣化で体質が変わったのか、日中家にいる時は100%つけっぱなしになりました。ただ、就寝時は28℃設定にしても翌日身体がダルくなるので消しています。しかし数日前、起きた瞬間に激しい頭痛に襲われて「うわあああ!これが噂の熱中症ってやつか!」とすぐに水分をとったのですが、熱中症には塩分の補給も大切だということで冷蔵庫の中にあるカラスミをかじりました。起き掛けに銀座のお寿司屋さんでいただいたカラスミで塩分補給。セレブだわー、あたし。皆さんも熱中症にはご注意あそばせ。そんなセレブな西山、最近41歳になって初めての体験をしてきました。それは、占いであります。以前このコラムでも書いたことがあるのですが(第10回『卑弥呼』参照、久々に読んだら文章が若くて恥ずかぴい)私は占いを信じないというか、むしろ嫌悪していました。その私が、なぜ占いに?一言でいえば、気まぐれなのですが、まあ41歳独身カラスミ女としてはやはり人生に迷いが生じているのでしょう。ここは一発、初体験!新しい世界が見えるかもしれないぞ!ってことで、休日にとある街へと足をのばしました。でも一人で行くのは怖かったので、仲良しのS子を道連れに。
当日、「こんにちは~」と恐る恐る開けた扉の向こうには、人の良さそうなおじさんが「はい、こんにちは」と座っておりました。私たちの前には先客がおり、真剣な顔でおじさんの話を聞いております。占い中も予約の電話がひっきりなしに鳴っており、世の中は悩める乙女で溢れているのだなあと思いました。この占いを教えてくれた友人からは事前に訊きたいことをリストアップしておいた方が良いとのアドバイスを受けていたのですが、箇条書きにしていたら最終的に「読み始めた本がイマイチの場合でも最後まで読んだ方が良いのか?」という、明らかに占いでは解決されない問題までもが浮上。さすがにそれは自分で考えよう。私たちの番になり、差し出されたシートに名前と生年月日等を書きます。うん、占いの判断材料だもんね。そして、その下には「好きな食べもの」「好きな色」「今一番行きたい場所」。何だか『Myojo明星』の新人アイドルアンケートみたいだわね、と思いつつ「米」「ロイヤルブルー」「バルセロナ」と書きました。一番最後は本当に今行きたいのかどうかわかりませんが、なぜか頭にその文字が浮かびました。何かの掲示だろうか?お隣のS子を見ると「アイス」「ピンク」「セブ島」と書いてあり、女子力高っ!と思いました。確かに職場でアイスを食べているS子はすごく幸せそうだもんなあ。おじさんはシートを眺めつつ、まずは人相や手相をチェック。おお、占いっぽい!大きな虫メガネを使ってふむふむと眺め、ボールペンで手相をなぞったりした後におじさんは「繭子さんは一生現役の人です」と言いました。一生現役?それはよく男性週刊誌の見出しにある『死ぬまでセックス』みたいなことであろうか?いや、いきなりそんな下ネタをぶっこんでくる占い師はいないだろう。「と、言いますのは?」「男性の実業家の手相をしていますからね、ずっと仕事を続けるということです」「はあ」「人相でいいますとね、繭子さんは男の人を寄せつけないんですよ」「はあ」占い開始1分でテンションがた落ちであります。一生一人で働くなんてまっぴらごめんなのに。「あの、私、結婚できますかね?」「できますけど、ABCDで言うならDの妥協婚です」「妥協…」もうこの時点で、私は「やっぱり占いなんて大嫌い」というマインドに。そんな私に気づいたのか、おじさんは「妥協といってもね、生理的に無理みたいな人じゃないですよ。繭子さんの仕事の邪魔をしない人でしょうね」とフォローを入れてきましたが、時すでに遅し。この時、隣のS子も「あ、まーたん聞く気なくなってる」と気づいていたそうです。「来年はオリンピックがあって世の中の流れが一気に変わりますからね、繭子さんがどれだけ隠れていようと見つけられてしまいます。世間が放っておきません」私は職業欄に役者、作家、会社員と書いていたので、きっとおじさんは励ましの意味も込めて言ってくれたのでしょうが、もう聞く耳を持たなくなった私は「罪を犯して逃亡しても無駄ということか」とぼんやり考えていました。マンモスかなぴー。私の後に占ってもらったS子も何だか腑に落ちないことをたくさん言われて目をぱちくりさせておりました。まあ3500円という良心的な値段を考えたら、楽しいイベントではあったかなと思います。その後は「占いは興味ないけどビールは飲みたい」と言う同じ職場のAも合流して、ビアガーデンへ。みんなで「たまには女子力高めにいこう」ということで新宿のルミネエスト屋上にある『WILD BEACH』というフォトジェニックな場所へ行ったのですが、写真なんて誰も撮らないし、BBQで焼いた肉は真っ黒焦げになるしで、終わってんなと思いました。はあ、妥協婚か…。おじさんは「国際結婚もあり得る」と言っていたから、しかたがない、ここは一つキアヌ・リーブスで妥協しておくか。待ってろ、キアヌ!

image2

最近のコラム

西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website