ワクチン2回目│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Writer

西山繭子

#178

ワクチン2回目

2021-09-13 16:09:00

 再び緊急事態宣言が延長になりました。とはいえ朝夕のラッシュに揺られて仕事に行く生活は何も変わらないので、ただただ友人と会えない日々が続くばかり。しかし先日、仕事終わりの疲れた身体をひきずって電車に乗っていたところ、隣にいた青年2人が「とりあえず軽く1杯いきます?」「そうだね」と普通に話していたのを耳にし、我慢している自分がバカみたいに思えて悲しくなりました。専門家の話では、このマスク生活はこのまま2、3年続くと言います。これは私だけが感じていることなのかもしれませんが、マスクを着用するようになってから他人がやたらと顔を覗き込んでくるようになった気がします。目だけしか見えていないからそういう印象を受けるのか、目だけしか見えていないことが人を無礼にさせるのかはわかりませんが、どちらにしろズケズケと踏み込んでくるような視線がストレスで、街を歩いている時、特に人とすれ違う時は下をうつむくようになりました。ただマスクをしていたおかげで良いこともありまして、先日何と100万年ぶりにカットモデルにスカウトされました。翌日に美容院を予約済みだったためお断りしたのですが、それがなかったら五分刈りでもパンチパーマでも何でもさせてあげたのに!とさえ思いました。こんな些細な喜びしかない日常でありますが、淡々と月日は流れ、前回のコラムで1回目のワクチン接種のことを書いたと思ったら、もう2回目です。ワクチンを打ちたくても打てない人が大勢いることを考えたら有難いことだとは思いますが、如何せん2回目は副反応が酷いという話をたくさん耳にしていたので、だいぶビビりながら接種会場へと向かいました。あいにくの雨だったため、自転車ではなく渋谷区内を循環するハチ公バスにライドオン。乗車してすぐに「ぎゃ!保険証忘れた!」と思ったのですが、接種券に同封されていたお知らせを読むと身分証明ができれば良いので運転免許証でも可とのこと。ほっとしたのも束の間、封筒の中にもう一枚予診票があることに気づきました。1回目に書いて終わりかと思いきや、2回目も書くのか。何たる不注意。ビビりすぎて注意散漫になっていたようです。皆さんもお気をつけください。接種の流れは1回目と何も変わらず、あまりソーシャルディスタンスが取られていない会場で係員の誘導に従って進んでいきます。私の問診を担当してくださった医師は、とても感じの良い小太りな若ハゲ先生で、独身だったら私と結婚してくれないかなあと思ったのですが、後ろが詰まっていたのでお願いできませんでした。僅か30秒の問診の間にそんなことを考えるなんて、コロナ禍で色々と追い込まれているんだなあ、私。前回同様、注射はさくっと終わり、15分間の休憩ののち会場をあとにしまして、その足で会員制ファンサイト『FLaMme PRESS』の動画撮影のために事務所へ。撮影前に「こんな感じです」と見せてもらったものが田中みな実さんの動画だったのですが、そのあまりの可愛さと輝きに「私、マスクしたままでも良い?」とすこぶる弱気になってしまいました。さっそくワクチンの副反応でしょうか。「水分をたくさんとると良いんだって」「冷蔵庫にあるだだちゃ豆持って行く?」「何かあったら連絡して下さい」ああ、みんな優しい。いつもは長居してしまう私ですが、さすがにこの日は早々にお暇しました。もちろんだだちゃ豆をいただいて。帰宅後はすぐにパジャマに着替えて、来たる副反応に備えます。ベッドに横になりながら電話で母に「何だか陣痛がくるのを待っている気分だわ」と言うと「うんうん。何かあったら産婆が伺いますから、いつでも電話くださいね」と不憫な娘に優しい言葉をかけてくれました。録画していた『勝手にしやがれ』『クロコダイル・ダンディ』を観ながら、ポップコーンかのようにだだちゃ豆を口に運びます。腕の筋肉痛はあるけれど体調は何も変わらず。もしかして私は副反応がない人なのかも。喜ばしいことではありますが、私のまわりで副反応が出なかったのは高齢者だけだったので、やや複雑な気持ちであります。結局、この日は何事もなくそのまま就寝をしたのですが、私の地獄は翌日からでした。39℃を超える高熱と、起き上がることもままならない身体の痛み。もう何も出来ません。だだちゃ豆を食べるのがやっとです。ああ、こんなにツラいのかあ。本を読むことも、スマホを見ることもしんどかったので、ひたすら町山智浩さんの大好きな『映画その他ムダ話』を聴きながらじっとしていました。それにしても副反応でこんなにツラかったのだから、コロナに感染したらと考えると本当に恐ろしいです。自分が感染しないためにも、そして大切な人を感染させないためにも、まだまだ続けなくてはいけないステイホーム。会えなくても優しさを受け取ることはできるのだから。

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2021.9.13 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website