大吉│西山繭子の「女子力って何ですか?」

西山繭子の「女子力って何ですか?」

Cast

西山繭子

#258

大吉

2025-01-13 12:07:00

 『奇跡の9連休』とは、どこの国のお話だったのでしょうか。1月も中旬になりましたが、みなさん、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。新年早々いきなり愚痴から始まりましたが、年末にニュースで『奇跡の9連休』『賃上げ』『ボーナスアップ』などと聞いては「はいはい、一流企業のお話しね」と能面のような顔になっておりました。私の場合は29日の撮影が仕事納めで4日からは会社で通常業務だったため、『ちょっと長めの5連休』でした。でも1月2日には「明日が最後の休みか。そしたら年末まで会社のまとまった公休はなし。ああ、地獄」、そして1月3日には「明日から仕事か。釣りバカ日誌の浜ちゃんばりの有給消化率でいこう。でも年末の撮影でけっこう使っちゃったんだよなあ。ああ、地獄」と気が重くなっていたので、気持ち的には『ただの3連休』といった感じでしょうか。ですので、特にどこかに出かけるようなこともなくいつも通りに過ごしました。普段からきちんと掃除をしているので大掃除もしません。ベランダや下駄箱、シンク下といった日常的にやらない箇所も春や秋の気候が良い時にやっておけば大丈夫。2024年の大晦日も掃除機をかけて雑巾がけといういつものルーティーンでした。この時に少し違ったところといえば、掃除中ずっと浜崎あゆみを聴いていたということ。前日、レコード大賞で歌っている彼女を見てすごく胸がゆさぶられた私。これまで特段ファンというわけでもなく、むしろあまりにも世間が騒ぐものだから冷ややかな目で見ている側だったのですが、改めて曲を聴くと、私の20代は常にアユとあったような感情を抱きました。音楽が記憶を想起させることは往々にしてありますが、もうすべての曲に「ああ、この時は彼氏の家の電気がしょっちゅう止められていたな」とか「ああ、この時は風呂無しアパートに暮らす彼とよく銭湯に行ったな」などと思い出がよみがえってくるのです。同じ1978年生まれ、いまだにトップスターを走り続ける浜崎あゆみの凄さよ。しかし、あまりにもアユのことをチェックしたものだから、私のタイムラインはいまだに彼女一色。アルゴリズムってすごいですね。そして掃除を済ませたあとは、映画館へ行き『占領都市』を鑑賞。こちらはスティーブ・マックイーン監督のドキュメンタリー映画なのですが、上映時間なんと251分。休憩があるとはいえ、ちょっとした修行みたいな感じです。2018年の大晦日、私はアウシュビッツ強制収容所にいました。(第115回『アウシュビッツ』参照)この旅はハワイとはまた別な意味で心に有益な旅でしたが、その際に「アンネの日記」を改めて読み、半年後にアムステルダムに行ったのです。『占領都市』は現代のアムステルダムを映しながら、そこでナチス占領下だった時代に何があったかを延々と語るという作品です。旅行の際、おめかしをして出かけて行ったコンセルトヘボウにも、コーヒーを片手にのんびりと読書をしたフォンデル公園にも、暗い過去の記憶が刻まれていることを知り胸がしめつけられました。悲劇の上に努力して築かれた平和がどれほど尊いものか、この作品を通して改めて考えることができました。251分もありますから、家に戻る頃にはもう夕暮れ時でありまして、年越そばを食べたらあとは寝るだけです。新年を待たずしての就寝が当たり前となって数年、この日も紅白歌合戦を録画して22時ぐらいには寝てしまいました。そしてふっと目を覚まし、自分のなかでは4時ぐらいであろうと思っていたのですが、時計を見ると0時15分。ビミョー。のそのそと布団をはいで寒さに震えながらトイレに。2025年最初に感じたものが尿意かあ。デトックスな一年ってことですかね。さすがに起きるにはまだ早いので、もぞもぞとベッドに戻りまだ温かい湯たんぽを抱いて再び眠りにつきました。元旦は毎年ヴーヴクリコを持って母の家に行くのですが、いつの頃からか母がそのミュズレでマグネットを作るようになりました。クリコ夫人のマグネットが何個も冷蔵庫に並んでおり、私としては何でこんなものを作っているんだろうなという感じなのですが「欲しい?あげない。うふふ」と言う母はとても嬉しそうなので、どんなに値上がりしても元旦のヴーヴクリコは買い続けたいと思います。そして、たらふく母の手料理を堪能して帰宅した私は、この夜、ものすごい発見をしたのです。それは「録画していた紅白歌合戦を見ると元旦なのに大晦日の気分になれる」というものすごい発見。まさにウルトラソウル。早速、姉に報告したところ「わー、新年早々すごいね。さすが、まーたん」と褒められました。今年はおみくじも人生初の大吉でしたし、良い一年になりそうです。2025年もどうぞお付き合いくださいませ!

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2025.1.13 配信

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西山繭子さんINFORMATION

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website