
ふたたび香港
2025-10-26 11:31:00
前回あれだけApple Musicのサブスクについて言及しておいて、無料期間が終了する日に解約するのを忘れた西山です。カレンダーのリマインドにしっかり入れておいたのに!いつもだったら、きちんとチェックするのに!じゃあ、なぜその「いつも」ができなかったのかと言えば、香港にいて心ここにあらずだったからです。
昨春、約30年ぶりに香港を訪れた私は(第243回『香港』参照)、雑多な街の雰囲気と素晴らしい料理の数々に感動。ぜひともあの美味しい雲吞麺と青菜を食べさせてあげたいと、秋には母を連れて行きました。そして今年もまた行きたいなあと思っていたところに、香港エクスプレスのタイムセールが!これまでずっとこの航空会社の存在は気になっていたのですが、辛辣な口コミを目にすることもあったのでなかなか一歩を踏み出せずにいました。しかし百聞は一見にしかず、まずは乗ってみなければわからないと思い切って予約。出発の朝、始発の総武線に乗るために新宿駅まではタクシーで向かいました。そのあと浅草橋で成田空港行の電車に乗り換えたのですが、朝5時だというのにかなりの人が乗っています。そしてその中には、ホスト風男子やキャバ嬢風女子の団体がちらほら。仕事終わりでそのまま海外にという感じなのでしょうが、車内でストロング缶を片手に大騒ぎのバカもいて、旅行前にちょっとイヤな気分。人間、つるむとろくなことがありませんな。だから私は一人が好き。電車は6時過ぎに成田空港に着いたのですが、そこで私は驚愕の事実を知ることになります。なんと保安検査場が7時にならないと開かないのです。なんだよ!わざわざタクシーに乗る必要なかったじゃんよ!きちんと調べなかった己に憤慨しながら40分ほどベンチでぼんやり。そして7時になり検査場に向かったわけですが、ここで驚愕パート2。そこには最後尾がどこかわからないほどの長蛇の列が。お願い、成田空港限定わらび餅の列であってくれ。しかし、そんな願いもむなしく、全員が保安検査を待つ人々でした。私のフライトは8時。これ、間に合うのかしら?この時間帯の出発便はLCCが多く、ほとんどの客が機内持ち込み荷物を手にしているため保安検査にも時間がかかります。また案内板を読んでいない人が多いのか、ペットボトルやタンブラーを持ち込んで注意されるという不毛なやりとりがそこかしこで繰り広げられているのです。はたまたダーツを持ち込めないと言われ、逆ギレしている輩もいました。ヤキモキしながら何とか保安検査場を通過し、出国審査を済ませて時計を見ればすでに7時半。これはもう乗れないかもなあと半ば諦めながらも搭乗口まで猛ダッシュです。LCCは搭乗口がこれまた遠いんですよね。以前、パリからバルセロナまでLCCで移動する際、シャルルドゴール空港で「このままバルセロナに着いちゃうのでは?」と思うぐらい歩いた記憶があります。47歳、何十年ぶりでの本気ダッシュ。朝ごはんの卵かけごはんが飛び出そう。そうして何とかファイナルコールを聞きながら飛行機に滑り込みました。ちなみに私のあとにもぜえぜえと肩で息をした客が10人近く乗ってきたので、ビリではなかった模様。座席でシートベルトを締め、息を整える私にCAさんがすかさずお水を持ってきてくれました。「お!気が利くねえ!」なんてことはなく、これは予約時に私が購入しておいたもの。香港エクスプレスは飲食物の持ち込みが禁止されているのです。まあLCCですからね。しかし私からすると座席が狭いということもありませんでしたし、モニターがなくても本を読んでいたのであっという間の5時間でしたし、これで往復3万円とならばまた乗ってみようと思った次第です。そうして到着した香港。昨年の春と秋に続いて同じホテルに泊まったのですが、そうなると「ああ、角の乾物屋の坊やが大きくなったなあ」などと思うほどに親しみを覚え、とても居心地が良いです。荷物を置いたらすぐに雲吞麺を食べに向かいます。異国で地図を見ることなく出掛けられるというのは、すこぶる自由を感じます。色々と厄介ごとは尽きないけれど、こうして自分の足で楽しい世界に踏み込んでいけるというのは幸せなことだなあ。うん、そうだ。もっともっと人生を楽しもう。そう思った私は、2泊3日のショートステイで雲吞麺にお粥に焼豚に上海蟹と大暴れ。それでもまだまだ食べたいものがあったので、また近いうちに訪れようと心に誓ったのであります。写真はペニンシュラ香港のマンゴープリンです。もちろん美味しかったですよ。何しろApple Music2カ月分のお値段なのですから。
2025.10.27 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website