
編み物
2026-01-26 11:41:00
数年ぶりに編み物を楽しんでいる西山です。余計なことを考えず、無心になってひたすら編み進めていくと、心がすっきりします。昔は編み物がストレス解消になるとは思っていなかったので、これは大きな発見でありました。棒針を一定のリズムで動かし、表目、裏目、表目、裏目と編んでいきます。1目ゴム編みであれば、それを繰り返すだけ。基本形であるメリヤス編みよりも、私はリズミカルに手を動かせるゴム編みの方が好きです。本来であれば何を作るかで編み方を変えるものですが、小難しいことはしたくないので延々と1目ゴム編みで真っすぐに編んでいきます。ですので、出来あがるものはマフラーかふんどしの二択です。母に「入院した時のためにカシミヤでT字帯を編んであげる」と伝えると「看護師さんが驚いちゃうから結構です」と断られました。以前母が入院した時、談話室でいつも大股を広げてT字帯丸見えで談笑をしているおじいさんがおり、私たち家族はそのおじいさんを『T字帯先生』と呼んでいました。それ以来、私たち家族の間では何かとT字帯が話題にのぼります。もちろん健康第一ですから、使用機会がない方が良いに越したことはありません。おじいさんも母も元気に退院できて良かったです。話を編み物に戻します。今は長方形しか編みたくない私ですが、昔はセーター、カーディガン、手袋など色々なものを編みました。私は根っこが非モテなので、好きな人に手編みのものをプレゼントしたくなるイタい女です。しかし、編んでいるうちに「こんなに頑張って編んだものを人にあげたくない」という気持ちになり、最終的に自分のものにします。イタい上にケチなのです。ですから誰にもあげていません。私のケチさが功を奏して、黒歴史が作られるのを阻止したというわけですね。そういえば、昔は冬になるとセーターブックなるものが書店に並び、男性芸能人の人気のバロメーターになっていました。我が家にもありましたよ、真木蔵人のセーターブックが。めちゃめちゃ複雑なアランセーターの編み図が載っていたと記憶しています。そんな難しいものに今後挑戦することはないと思いますが、最近はユザワヤで色とりどりの毛糸を眺めているだけでも楽しいです。昔は筒状に編む場合は棒針を4本使っていましたが、今は輪針というものがあるのですね。これを使えば腹巻もいける。長方形だし。輪針買ってみようかな。
こうして誕生日当日も朝から編み物に励んでおりました。48年前の朝、私は山形市にある産院で産まれたのですが、その当時すでに父は若い女優と不倫状態にありましたから、母にとっては大きな不安のなかでの出産だったと思います。その娘に48年後にT字帯を編んでやるぜなどと言われる母の気持ちを考えるといたたまれない。山形、寒かっただろうなあ。私の誕生日は大寒ですから、今年は東京もしっかりと大寒波に襲われました。私が暮らす築29年のマンションは、室内にも関わらず結露した水でサッシに氷が張るという極寒の地であります。それでも加湿器をわんわん焚いたお部屋で足元に湯たんぽを置き、膝にブランケットをかけて、紅茶をすすりながら編み物をしていると、このうえない多幸感に包まれました。昨年の誕生日は北海道の美深で過ごし幸せいっぱいでしたが(第259回『青い星通信社』参照)、今年もなお幸せ。さらに、この幸せは夜にはピークを迎えます。事務所の社長はじめスタッフにお祝いをしていただいたのです。フラームのみんなと過ごす誕生日は6年ぶりでありまして、この時は父がクモ膜下出血で倒れて鉄板焼きから救急へという忘れられない誕生日でした。今年は中華をリクエスト。老舗高級店のテーブルにつき、さっそくメニューをふむふむ。「私は上海蟹と北京ダックがあれば、もうそれで充分なんで」「りょうかーい」「あ、あと春巻きと黒酢の酢豚も」「OK」「あ!上海蟹の小籠包も」「けっこうあるね」だって誕生日ですから。宴にはフラームのデスク美人三姉妹が勢ぞろいだったのですが、彼女たちがいなかったら絶対にフラームは回らないというスーパーデスクです。縁の下の力持ちというよりも、私は影のボスだと思っています。事務所に顔を出せば、仕事からプライベートの話までいつも優しく耳を傾けてくれて、本当に感謝しかありません。この日も社長の話そっちのけでデザートを選んでいるあたり、最高だなって思います。社長からはプレゼントにダウンコートをいただきました。ファッションに疎い私にとっては初見のMackageというブランドのものなのですが、これがめちゃめちゃ暖かい!どれくらい暖かいかといえば、私の家より暖かい!これを着ていれば真冬の公園でも編み物ができそうです。黒の次は綺麗な色を選びました。
2026.1.26 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website