コーテルリャンガー!
2015-10-22 19:49:00
ここ近年の中国人観光客の多さはすごいですね。銀座も渋谷も新宿も、日本人より中国人の方が多いのではないでしょうか。女子力が高い人はクリステル的おもてなしの心を持って温かい目で見守っているのですかね。女子力が低いうえに、器がミクロの私にはそんなことできません。正直、辟易しています。中国人観光客が多いのは日本だけではなく、世界中でのこと。NYもパリもロンドンも、どこもかしこも中国人観光客だらけです。数年前、ニースのネグレスコ・ホテルでのことです。朝食をとるためにサロンへと向かった私、一人だったのでまずは席をとるためにテーブルに文庫本を置き、それからビュッフェ形式の朝食をとりに行きました。美味しそうなクロワッサンやハムを皿に盛り席に戻ると、そこには中国人観光客がかけ麻雀でもやってんのかってぐらい大声でお喋りをしながら座っていたのです。私が英語で「ここに本を置いて、席をとっていたのだけど」と言うと、彼らは「ア?」といきなりキレ気味に反応。床を見ると置いていた文庫本が捨てられたように落ちていたので「これ、ここにあったでしょ?だから、ここは私が座るの。どいて」と私も日本語でちょいギレ。日本語と中国語で平行線の口げんかをしているのをホテルの人に仲裁されるという恥ずかしいことをしてしまいました。憧れのネグレスコ・ホテルで気分はBOROだったのに台無し!今年の2月にはマンチェスターにUEFAチャンピオンズ・リーグを見に行ったのですが、四方八方を中国人に囲まれての観戦。試合中ずっと「アイヤー!」「チャヨウ!」「コーテルリャンガー!」と中国語しか聞こえず、あれ?ここ、天下一武道会の会場ですか?みたいな感じ。高いお金を払ってチケットを買って、マンチェスターまでやって来て、やっと憧れのダビド・シルバが見られたのに、どうして天下一武道会なんだ!タオパイパイ!タオパイパイ!と、沸々と怒りがわきあがってきました。そして、理不尽とはわかりながらも私は『中国人が嫌い』という思いを抱いてしまったのです。
中国の人口は現在約13億人。この人たちを『嫌い』と一言で片づけてしまっては、この先の国際社会で確実に生きづらい。女子力を上げる以前の死活問題です。そこで私は考えました。「そうだ、中国に行こう」何故そうなる?と思われるかもしれませんが、私は中国に行って一人でもいいから良い人に出逢いたいと思ったのです。そしたら中国人に対しての偏見もなくなり、今後旅行先でイライラすることもなくなるんじゃないかって。あたし、あったまいいー!さすが公文やってただけあるよねー!(小3までだけど)というわけで、まだ暑さの残る9月中旬に中国に行って参りました。
羽田空港からびゅんと約4時間、近代的な北京空港に降り立った私は、まずイミグレで一番人の良さそうな女性係員の列に並びました。色んな国を旅しましたが、この第一印象って本当に大切なのです。パスポートを出しながら「ニーハオ」と言うと、彼女は笑顔で「ニーハオ」と答えました。ああ、良い人!出だしは良好だ!そして、お次はホテルまでのタクシー。中国へ行かれた方はわかると思うのですが、英語はまず通じません。ワンツースリーも通じないレベルです。今回の旅は良縁祈願祭にも一緒に行ったKぴょんと一緒だったのですが、彼女がプリントアウトしてきたホテルの地図等は全て英語表記。運転手さんはもちろんわかりません。中国語で何か訊いてきますが、私たちもさっぱりわかりません。すると運転手さん、自分の携帯電話でホテルに電話をしてくれました。ああ、良い人!まさかの連続良い人!もうこれで私の中国に対しての印象はかなり良くなりました。タクシーの中から眺める北京市内はとにかく全てが大きい!建物も道も全てのスケールが大きいのです。片側5車線の道なんて初めて見ました。ホテルに荷物を置き、地図で見た感じでは歩いてすぐの天安門広場へと向かったのですが、地図で見ると歩けそうでも1ブロック区間もすげー大きいのできちんと縮尺をチェックして下さいね。そして目的の天安門広場に行ってみると、そこは人人人の渦!ここではっきりわかったことがあります。中国人観光客が世界一多いのは間違いなく中国です。外国人なんてほとんど見ません。自撮り棒を振り回し、毛沢東の肖像画の前で嬉々として記念撮影をする中国人たち。今まで都内で中国人の多さに辟易していた自分がバカみたいだと思いました。そして、よく中国人はマナーが悪いと言いますが、実際に中国で感じたのはマナーが悪くなければ生きていけないということ。北京から上海までの寝台列車の切符を買うために北京南駅の窓口に並んだのですが、わりこみは当たり前。おとなしく順番を待っていたら、切符を買う頃にはおばあちゃんになっています。そして街中の交通ルールもめちゃくちゃ。青信号で横断歩道を渡っていても車、バイクが容赦なく突っ込んできます。いつ死んでもおかしくない。なので、街にいる中国人の皆様は全員運がいい人なのだと思います。いつもこのコラムを楽しんでくれているKぴょんと二人「この国で生きていくには、女子力よりも先につけなきゃいけない力があるね」と頷きました。今回の旅で中国には良い人がいることもわかりましたし、マナーが悪いのはしかたがないと受け止められるようにもなりました。結果、行って良かったなと思いますが、また行きたいかと訊かれたら「もういいです」と答えます。すごい国だぜ、中国!コーテルリャンガー!
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
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