笑う門には
2016-09-12 12:20:00
木村拓哉さんが出演しているCM、撮影を終えたキムタクの「記念写真を撮りましょう」という呼びかけに三人の女性たちが「私はおばさんだから、いいです」と苦笑いで断ります。すると、キムタクが「やめましょうよ、そういうの」と、ジャケットをカメラにバッサ~。暗転した画面には『着物で変わろう』の文字。続いて着物を着て、美しくなるおばさん3人。そんな日本和装のCMを見ました。これを見て、おばさんは記念写真を撮るためにわざわざ着物着なきゃいけないのかよ!と思ってしまったのは、私が卑屈なおばさんだからでしょうか。いやー、そりゃ卑屈にもなりますよ。『誰でも参加OK!』な街コンの募集要項が35歳以下なんですもの、卑屈になりますよ。先日、そんな私がまったく卑屈にならず、最高に楽しく過ごせる恒例の女子会に出席してきました。ここでも何度か登場している(21『女子会』参照)私の大好きなおばさんたちが大集合!
今回は赤坂の焼肉屋さんに集合しました。もちろん迷わずに個室を予約。私たちが集まると本当にうるさいんです。ここ数年ますますうるさくなってきたのは、きっと耳が遠くなっているからだと思う。25年前は授業中に先生の目を盗んでコソコソ話をしていた私たちだけど、今あの時のボリュームで話したら「え!?」「あんだって!?」とまったく会話にならないはず。到着してすぐに店員さんから「コースでの注文ですとお時間に制限がないんですが、通常メニューですと1時間になります」と言われ、もちろんコースを選択。しかしこの時も、後から来た子に「コースじゃなきゃ1時間で出て行けって言われたからコースにしたよ。コースだったら無限にいられるって」と説明。店員さん「出て行け」とも「無限」とも言ってない。でもおばさんたち、耳が遠いから聞こえないの。聞こえていたとしても解釈がオリジナルなの。そんな個室に「暑いねえ」と言いながら徐々に集まってくるみんなの手には、おばさん必須の夏アイテム、タオルハンカチ。ハンカチではどうにも心もとない。ちなみに私は、斎藤佑樹選手が甲子園で使っていたのと同じものを持っているのですが、あれもタオルハンカチですからね。つまり、斎藤選手はハンカチ王子ではなく、本当はタオルハンカチ王子なのですよ。そんなタオルハンカチ王子のような人種には見向きもされない私たち、この日集まったのは総勢10名でした。内訳は大人8、子ども2。子ども少なっ!アラフォーなのに、子ども少なっ!数日前、姉宅で女子会が開催された時、同級生を3人呼んだら、もれなく子どもが全部で9人になったそうな。たぶんそっちが正しい世界。それでも前向きな私たちは「子ども2人が爆下げしてくれたから、平均年齢が31歳になったね!」「おお!」と拍手。どうして平均をとったのか意味がわからない。まずはビールで乾杯しつつ「最近どうよ」と近況報告。しかしここ数年、芸能人ブログでいうところの『ご報告』ってやつが、ぱったり停滞中で、内容はもっぱら健康相談。S子の「最近、疲れてくると手がこわばる」とのご報告に「わかる、わかる」の声。こわばる、つる、かすむ。これは、若い子たちの女子会には絶対に出ないフレーズ。ちなみにS子は数年前、街角で生理用品の試供品を渡されてラッキー!と思って、よく見たら尿もれパッドだったらしい。確かにそろそろそちら側。大人8名中、5名が独身というイケイケの私たち、35歳を過ぎた女性がその後結婚できる確率は2%という統計から考えると、その5名のうち結婚できるのは0.1名ということで、もう絶望的というか、0.1名ってそもそも結婚できても臓器の一部じゃないの?って話ですよね。それでも前向きな私たちは、それぞれの結婚に対する思いを口にします。その中で、ズバ抜けてワケがわからなかったのが、大学で教鞭を執っているKぴょんの「最新医療を受けさせてくれる旦那がいい」でした。ちなみにKぴょんは、すごく健康です。私も理想の結婚というものはありますが、もうそんなことを言っている場合ではない。しかも子どもを産もうとなると、現実的に厳しい年齢。私が「今から出会って、自己紹介して、お互いのことを知って、それから結婚して、子どもができてだなんて道のりが果てしなく遠すぎる」と弱音を吐いたところ、みんなが「出会ったらすぐホテルに行けばいいよ!うまくいけば間を全部すっ飛ばせる!」と励ましてくれました。みんな、ありがとう!やっぱり、持つべきものは友!そんなおばさんたちの話に耳を傾けることもなく、保育園に通うMの娘は「あちゅい!」と上半身裸で焼肉を食べていました。前途多難。こんな風にいつも通り、笑いっぱなしの女子会でした。卑屈になっていると女子力は下がる一方。笑う門には女子力来たるです。写真は最近、大笑いした『ブリジット・ジョーンズ』の最新作。この映画で、さらに勇気りんりん!いつの日か、素敵な白馬の王子様が、私の腎臓と結婚するという希望を胸に、日々笑顔でいたいと思います。とどのつまり、まずはドナー登録ということですね。
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』などがある。
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