https: 緊張しています│西山繭子の「女子力って何ですか?」

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西山繭子の「女子力って何ですか?」

#228

緊張しています

2023-09-27 21:24:00

 おじさんは、どうしてわざわざあんなに大きなくしゃみをするのだろうと子どもの時から不思議に思っていました。しかし先ほどゴミ出しに行った際、Tシャツ&短パンだった私は、思いのほか秋めいた気候にブルブル。そして鼻がムズムズ。いつもだったら「くしゅん」と宮川匡代の漫画『ONE』の主人公ばりに可愛らしいくしゃみをするのですが、素晴らしい秋晴れの下、まわりに人がいなかったのを良いことに、「は、は、は、はっくしょん!!」と盛大にくしゃみをしたのです。すると、あら不思議。何だかすっきり。心が解き放たれたような感覚すらします。そうか、そういうことか。おじさんたちはくしゃみと共にストレスを解消し、日ごろの鬱憤を晴らしていたのか。長年の謎が解けた瞬間であります。皆さんも一度、お試しあれ。
 今、この冒頭の一文を読んで「こんなに涼しいのに、まだTシャツと短パンなの?」と思った方がいらっしゃるかもしれません。実は、今回のこの原稿、いつのも〆切よりもだいぶ早めに書いています。なぜかと言えば、この原稿が更新される頃、私はパリにいるからです。コロナ禍を経て実に3年ぶりの海外です。本来であれば「ひゃっはー!いえーい!」なのかもしれませんが、小心者の私は、久々の海外とあって物凄く緊張しております。自民党女性局の視察旅行のようにすべてがお膳立てされていれば、何も心配することなくエッフェル塔の前でとんがりポーズをとって記念撮影をできるのですが、個人旅行なのでそうもいきません。今回の行き先はロンドンとパリ。必要となってくるのは、まず航空券です。高い高いと聞いてはいましたが、3ヵ月前に予約をする時点でビジネスクラスが100万円を超えていました。今回も母との旅行なので、せめて母だけでもビジネスクラスにと思っていましたが、値段を見て「甲斐性のない娘で申し訳ないですが、エコノミーです!少しでも旅が快適になるように、そのプヨプヨのおなかを少しでも引っ込めておいて下さい!」とお願い。今はロシア上空を飛行できないので14時間25分の長時間フライト。機内エンターテイメントのラインナップをチェックしたところ、これまでの『ミッション・インポッシブル』シリーズ6作を全て見ても時間が余ります。もう苦行に近いのですが、私と母にはスペシャルな楽しみがあるのです。それは、大好きな姉が乗務する便だということ!私も母も、姉の仕事っぷりを見るのはこれが初めて。他のお客さんが機内エンターテイメントを見ている頃、私と母はひたすら姉をガン見です。私たちが座るのは後方の席なので、先日姉に「機内食、豚肉の方を食べたいからとっておいてくれる?」と伝えたところ「お客様、申し訳ございませんが、そのようなことはできかねます」だそうです。家族といえども、特別扱いは禁止でございます。航空券をおさえたら次はホテルです。私が最後にロンドンに行ったのは2017年のことで、この時に宿泊したのは6人部屋のドミトリーでしたが、それでも1泊1万円ほどしました。本当にロンドンのホテルは高いです。そしてここにきて地獄の円安。検索サイトで調べたところ3泊78万円のホテルが『おすすめです!』と出てきて白目になりました。さすがにそんな高級ホテルは無理なので、こじんまりした可愛らしいホテルを予約。そしてパリは、母のリクエストで以前泊まったホテルを予約しました。何てことのない3つ星ホテルなのですが、海外で同じ場所を再び訪れる喜びってありますよね。そしてお次は観光プラン。この秋にロンドンに行きたいなと思ったきっかけは、英国ロイヤルバレエが『ドンキホーテ』を上演すると知ったことにあります。2020年1月に調布グリーンホールで行われた私のバレエ引退公演。(第139回『ドンキホーテ』参照)引退公演ですがもちろん群舞なので、観に来てくれたフラームの社長は「何で繭子がずっと端っこなの?」と不満そうでした。一方、母は「繭ちゃんが1番上手だった!本当に面白かった!」と頭おかしめ。もちろんみんな頑張ってはいましたが、これが『ドンキホーテ』だと思われたらセルバンテスも草葉の陰で泣いてしまうであろうということで、ぜひとも本物を母に観せてあげたい。そう思ったのです。ロンドン時間の発売日時に合わせて無事にチケットを手に入れることができました。そしてその日のランチには、ロンドン最古のレストラン『Rules』の予約をしたのですが、ここで痛恨のミス。名前を入力する際に敬称を選ばなくてはいけないのですが、何だかたくさんあってよくわからない。でもたぶんこれ。と私が選んだのは『Miss』これは未婚女性でも「若いお嬢さん」といった意味合いがあるようです。当日、予約時間に現れるMiss Nishiyamaをお店の人は笑顔で受け入れてくれるのでしょうか。写真はその昔、ロンドンの老舗高級ホテル『The Savoy』で撮ったものです。ドヤってますが、ここ、厠です。

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2023.10.9 配信

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西山繭子さんのINFORMATION

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西山繭子

日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。

オフィシャルサイト→FLaMme official website