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人生は楽しいなり
2024-03-25 10:05:00
昨年とうとう花粉症デビューと思っていた私ですが、今年は何ともありません。少し前に俳優の斎藤工さんが「小麦粉をやめたら花粉症が治った」と話していました。うーん、その影響かなあ。私は、完全に小麦粉をやめたわけではありませんが、パンをめったに食べなくなりました。それは健康のためではなく、高いから。パンがなければ米を食べればいいじゃない。花粉症の症状が出ないのは、そのおかげなのかはわかりませんが、何はともあれ、目を真っ赤にしている方々を見ていると、ほんのり春めいてきたこの季節を満喫できるのは幸せなことだなと思います。しかし強欲な私は、もっと幸せになってやろうじゃないかと、前回の函館に続き、ふらりと旅へ。今回は名古屋へ日帰り旅行です。
名古屋は2021年にドラマ『ドリームチーム』の撮影で滞在し(第165回『名古屋』参照)、その魅力を知った土地。当初、普通に新幹線のチケットをとって行こうと考えていたら、JR東海の『ずらし旅』なるものがあることを知りました。新幹線の時間帯は限られるものの、もともと食べようと思っていた山本屋の味噌煮込みうどんまでついて正規の新幹線往復料金より安いなんて、なんとお得なのでしょう。この日の新幹線は満席。ジブリパークの『魔女の谷』のオープンの日であったことも理由の1つかもしれません。そちらもいつか行ってみたいものです。到着してまず向かったのは老舗喫茶店コンパル。名古屋といえばモーニング。ドリンクにゆで卵やトーストがついてくるという、何とも素晴らしい食文化です。しかし私が頼んだのはモーニングではなく、名物のエビフライサンド。パンをめったに食べなくなったと書いた矢先のパン!でも、やっぱり美味しいぜパン!はさまれたエビフライはプリプリで、タルタルソースとカツソースのコラボレーションが千切りキャベツとふんわり卵を極上絶品にまとめています。朝からどえりゃーがっつりですが、旅先ではカロリーは気にしない、それが私のモットーです。きりっ。満腹のおなかをさすりながら、駅で『ドニチエコきっぷ』を購入して東山線に乗り覚山王駅へ。ここに来た目的は梅花堂の鬼まんじゅう。前日にしっかり予約済であります。ずっしりと重い鬼まんじゅうを受け取り、次に目指すは大須観音。若い頃は神社仏閣なんてまるで興味がなかったけれど、人というのは変わるものですねえ。手を合わせて家族の健康を願います。大須商店街を少し歩いて、そのあとは再び地下鉄に乗って愛知県美術館へ。ここにはクリムトの『人生は戦いなり(黄金の騎士)』があります。2年前に来た時、そのポストカードを父に送ると「名古屋は、昔から芸術を大切にする文化があるんだよ」と教えてくれました。その文化のおかげで、こうして今、クリムトをたっぷりと眺めることができる。昔の人よ、ありがとう。この日はピカソ、ゴーギャン、ミロの作品も観ることができました。そして名古屋駅に戻り、高島屋でヴァンサン・ゲルレのビスキュイサンドを購入し、山本屋で味噌煮込みうどんを食べ、クリスピークリームドーナツで名古屋限定ドーナツをぱくり。食べすぎだ!でも、このあと踊り狂うから大丈夫!そう、ここから向かうは今回の旅の目的、ジャネット・ジャクソンのコンサートであります。横浜公演の日は撮影が入っていたので、名古屋に遠征することにしたのです。これね、少し前の私だったら「チケット代に、さらに旅費があ」と躊躇したと思うのです。しかし西山は変わりました。だって、このお金を節約したところで税金に持っていかれて、よくわからない都庁のプロジェクション・マッピングなどに使われるんですよね。じゃあ、自分のために使うのが一番。税務調査は人を変えます。開演前に「ジャネット・ジャクソンのコンサートは、10年ぶりぐらいかな?」とググってみたら、なんと前回行ったのは25年前!四半世紀前ですよ。赤子が社会人になりますよ。月日の流れの速さに白目になりました。それでも、あの日と変わらぬ感動を与えることができるのがスーパースター。放課後、鏡がある6階の体育館で中学生の私は『If』のダンスを一生懸命練習しました。そのダンスを目の前で57歳のジャネットが踊っている。ああ、本当に来て良かった。今は亡きマイケルとの『Scream』、新春かくし芸大会で和田アキ子さんが披露した『Rhythm Nation』何から何まで私の胸を熱くするコンサートでした。スペシャルゲストのTLCも、90‘sで時が止まったかのようなノスタルジー。それでも「ああ、あの頃は良かったな」そんなことは決して思いません。あの頃も楽しかった。そして今は、もっともっと楽しい。『人生は楽しいなり』クリムトだったらどんな絵を描くのでしょう。
2024.3.25 配信
日本の女優、作家。東京都出身。
大学在学中の1997年、UHA味覚糖「おさつどきっ」のCMでデビュー。
テレビドラマを始め、女優として活動。
最近は小説やテレビドラマの脚本執筆など、活動の幅を広げている。
著書に『色鉛筆専門店』『しょーとほーぷ』『ワクちん』『バンクーバーの朝日』などがある。
オフィシャルサイト→FLaMme official website